なんとなく感覚としてはそうなんだろうなと思っていたのですが、それを論文としてまとめているものがあったのでご紹介。
骨折はあまり死なない病気なんてことがよく思われているのですが、高齢者の骨折はちょっと違います。それ自体が身体の衰えを表しているのでしょう。骨折を契機に具合が悪くなって死亡につながるなんてことがよくあります。
以前に大腿骨頚部骨折で、手術介入の時期による死亡率の差、なんて論文(Early mortality after hip fracture: is delay before surgery important? Moran CG, Wenn RT, Sikand M, Taylor AM. J Bone Joint Surg Am. 2005 Mar;87(3):483-9.)を見かけましたが、今回は大腿骨遠位の骨折でした。大腿骨遠位というのは大腿骨の中でも膝に近いところのことを指します。
Clin Orthop Relat Res. 2010 Sep 10.
Mortality After Distal Femur Fractures in Elderly Patients.Streubel PN, Ricci WM, Wong A, Gardner MJ.
Mortality After Distal Femur Fractures in Elderly Patients.Streubel PN, Ricci WM, Wong A, Gardner MJ.
60歳以上の患者92人、1999年から2009年までのデータに基づいています。
この論文によれば、大腿骨遠位の骨折では頚部骨折と同様、手術の遅延(4日以上たってからの手術)は6ヶ月後死亡率、1年後死亡率に悪影響を与える、というのが結論です。
48時間以内に手術を行った場合の6ヶ月後死亡率は5%、1年後死亡率は6%。それに対して4日以上たってから手術を行った場合は6ヶ月後死亡率が35%、1年後死亡率が47%だそうです。
手術が必要な患者にはさっさと手術をするのが一番です。それは整形外科医なら誰でも分かっていることだと思います。
しかしながら、実際の臨床の現場では手術枠の確保とか、麻酔科との兼ね合いとか、なかなか一筋縄ではいかないハードルが立ちはだかります。
科をあげて、手術室、病院をあげて考えていかなければいけない問題なのです。
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