2010/02/26

インプラント・ラグ


ドラッグラグという言葉がある。

ドラッグ・ラグ - Wikipedia

ドラッグ・ラグとは、新開発の薬を患者に投入できるまでの時間差、あるいは、海外での新薬を国内承認できるまでの時間差のことである。海外との関係では、標準的に承認されている医薬品について、国内で承認されない状況が続いたり承認が遅かったりする問題と、海外で危険性が指摘されているにもかかわらず使用の継続が認められる問題をさす。


ドラッグではないけれど、同様のことが整形外科分野でも言える。

整形外科分野の一つに骨折という病態がある。骨折の手術法にはプレートで固定する場合もあれば髄内釘という器械を使う場合もあったり、金属製のワイヤーで固定する場合もある。

金属の内固定剤をインプラントと言う。このインプラント、利用できる種類が米国と日本では違うのだ。もちろん日本の方が選択肢が少ない。

例えば、右の写真のようなプレート。13508-412664f0ce2fc964.png


触ってみると分かるのだが、スネの骨は皮膚のすぐ下に存在する。ここにプレートをあてるなら、なるべく薄い方が皮膚へのダメージが少なくていい。

このダメージにより、皮膚が壊死したりなんかすると大変で、なかなか新しい皮膚ができてこなかったりする。場合によっては植皮が必要になったり。

米国で発売されているこのプレートは、骨にフィットするようにと改良されて作られたもの。これは日本では使うことができない。日本で今利用出来るのはこのプレートの一世代前のもので、かさばるタイプのもの。

もちろん使っても問題を起こさないことが多いんだけど、できればより安全に手術がしたいし、余計な合併症は作りたくない。それが患者にとっても望むところだと思う。

素材とか強度とか、安全面でクリアしなければいけない課題もあるのだと思う。だけど、米国で使用されている実績があるものがどうして日本で使えないのか。日本人と米国人は違うというのであれば、日本でスムーズに認可できるように制度を変更すべきではないのか。


そんなことを考えながら日々患者さんと向き合っています。


2010/02/15

「Wii」とか「任天堂」の名前がついた病名が世界にはある


Wii骨折、Wii炎、任天堂炎。

直訳するとこんな感じでしょうか。Wiiとか任天堂が病名の中に入ってるんですね。

内容をみてみると、Wii炎は腱鞘炎のことを、任天堂炎も腱鞘炎のことを指しているようです。



The New England Journal of Medicine という医学雑誌の最新号



という記事からです。Correspondenceです。


名前から察する通りなんですが、Wiiや任天堂のゲーム機を使って骨折や腱鞘炎を起こしたということが報告されています。



Wii Fracture(Wii骨折)


これが今回報告されているものです。

14歳の女の子がWii Fit balanceで遊んでいたらバランスを崩して転倒。足をひねりました。

wii fracture
レントゲン写真。

たしかに折れています。見えづらいですか。矢印の先に横方向に黒い線が入っています。骨折線といいます。

第5中足骨骨折ですね。Wiiやらなくても足をひねってこの骨折を起こす場合があります。日常診療ではよく見かけます。

幸いこの患者さんは手術をせずに治療できたそう。おそらくギプスで治療したんでしょうね。十分治りそうです。



Wiiitis(Wii炎)


ウィィイティスと発音するのでしょうか。読みづらい。

こちらは2007年6月にAcute WiiitisとしてNEJMに報告されています(NEJM -- Acute Wiiitis)。

このときは29歳の男性が右肩の痛みを訴えて病院を受診。調べたところ、Wiiテニスのやり過ぎによる右肩の腱鞘炎だったそうな。

本物のテニスさながらにWiiのコントローラーをぶんぶん振り回していたのでしょうか。

Wiiの場合は実際のテニスと違って、走ったりしませんよね。そうすると、体があまり疲れないからついついやり過ぎになってしまうようです。



Nintendinitis(任天堂炎)


こちらも同様にNEJMに1990年に報告されたもの。

当時流行っていた任天堂のビデオゲーム、スーパーファミコンのことでしょうか。それのやり過ぎによる親指の腱鞘炎です。


腱鞘炎というのは基本的にオーバーユース(使いすぎ)で起きるものです。

どちらの腱鞘炎もWiiをやめる、ビデオゲームをやめるという対処でよくなったそうですよ。一般の腱鞘炎と一緒です。



ことあるごとに一流医学雑誌にその名前を取り上げられて任天堂もいい迷惑かもしれませんね。それだけ普及しているということでしょうけど。

掲載されたこのCorrespondenceにはWiiが悪いなんてことはいっさい書いてありませんので誤解の内容に。

使い方によってはリハビリにも利用されているなんてことも書いてありました。要は使い方の問題ということ。

しかし、Correspondenceとはいえこうやって一流の論文に病名として登場するなんて任天堂は偉大な企業ですね。



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