2010/08/20

虐待と骨折


先日は若いシングルマザーによる、ネグレクトによる子供の虐待死が話題になっていました。

僕が専門にしている整形外科も子供の虐待とは無縁ではありません。

虐待による骨折という場合もあるからです。

骨折した子供が救急外来を受診したとき、どうして骨折したのか状況を尋ねます。いつもの問診です。小さな子供になると、自分で状況を説明することはできませんから、必然的に母親もしくは父親に状況を尋ねます。

交通事故とか、遊んでいてジャングルジムから落ちたとか、はっきりとした原因があれば虐待を想起することはありません。

しかし、なかには「気づいたら子どもが泣いていて、足が腫れていたので連れてきた。」などと曖昧なことを話す親もいます。

これだけの骨折をしているのに、”気づいたら”ってことはないだろう、という場合は小児科の先生も登場して虐待が背景にないか調べたりするのです。

ただ、骨折した本人はもの言えぬ子供です。なかなか真相究明につながらないことも多いのです。


骨折の部位とか形態によって、虐待が証明できれば、それ以上の虐待を防止することができるかもしれません。

この前見かけた論文で、骨折の部位と、虐待である可能性について触れられていました。


The Radiographic Approach to Child Abuse. [Clin Orthop Relat Res. 2010] - PubMed result

高い特異度で虐待の疑い
骨幹端の角の骨折、後内側の肋骨骨折、胸骨骨折、肩甲骨骨折、棘突起骨折

中等度の特異度で虐待の疑い
多発骨折、骨端離開

低い特異度で虐待の疑い
長管骨の骨折、鎖骨骨折

だそうです。

大腿骨骨幹部骨折などは時々見かけるのですが、虐待くさくないということなのですね。意外でした。

体の中心に近いところの骨折が虐待くさいというなんですね。

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